教室の中、休憩中女子がよく騒ぐようになった。

ごそごそと机の上に並ぶのはお菓子の本とかラッピング用のきれいな紙やらリボンやら。

通学鞄のどこにそれだけ大量な物体を仕舞い込んできたのかと思えるほどに多い。

今年は何を作るか、何個作るか、誰にあげるか、義理の数はどうするか、とか。

それでなくても五月蠅いのに、ここ最近格段に五月蠅さが増している。



ケータイのカレンダーを見てみれば、なるほど納得。





 邂逅 番外編 一世一代の大勝負





一世一代とはいっても、毎年あるのだけれども。

女子の五月蠅さに比例して、男子もひそひそと相談している姿がよく目に付くようにもなった。

誰からもらえるか、今年はいくらもらえるか、とか。

男は男でプライドをかけた大勝負のようだ。

ここ最近、女子に対していつも以上に優しく接しているのはそのためか。





「……オレには関係ないけどね。」

見知った女子の中に意中の相手なんているはずもない。

今までそんなものに関心を持ったことさえ無かったかも知れない。



感心がないといえば、ハヴェルもそんな部類の気がするな…。

彼のことだ、そんなイベントのことなど頭になく、ひたすら端末と睨めっこをしていたのだろう。

容易に想像できて苦笑する。



でもハヴェルは知らなくても世の中の女達がハヴェルを放っておくハズがない。

自慢じゃないが、彼はいい男だ。

頭も良くて、将来有望。優しいし、良く気がつくし。

思い出して緩む頬を慌てて叩く。



知らず知らずのうちに、大量の贈り物が届いていたに違いない。

甘いものは好きそうではないが、どうしていたのだろう。

律儀に全部食べているのかな。



そこまで考えて、少しむっとしていると背中をばん!と叩かれて思わず噎せた。

「ジーン!何変な顔してんだよ!!あ!さてはお前もとうとう気にするようになったのか!?」

良くつるんでいる、俗に言う友人という奴が後ろでからからと笑っている。

「そんなんじゃねーよ!ちょっと考えごとしてただけ!」

思い切り叩きやがって…と愚痴っても、いつものことだと全く悪びれていない。

まぁ、そんなところが気に入って一緒にいるんだけれど。



「お前は良いよなぁ!美人のお姉さんから確実にもらえるんだもんなぁ…。」

「お前にだって姉さんいるんだろ?」

「あ〜だめだめ!あんなのからもらったって嬉しくも何ともない!!」

胸の前で手を交差させてダメダメと首を横に振る。

「やっぱ身内からもらう奴より、かわい〜い、ちょっと気になる子からもらった方が嬉しいじゃん?」

「ふ〜ん……。」



やっぱそうなのか。

好きな人がくれた物のほうがやっぱり嬉しいよな…。

「お前、まだ好きな子いねぇの?」

「……いるよ、大人の人。」

「う〜わ!高嶺の花ってやつ!?高望みしすぎだって!ジーン。」

俺らは所詮お子様なんだぜ〜と肩に手を置いて諭すように呟く。



(……一応お付き合いみたいなのはしてるんだけどな……。)

しかもする事済ませてしまっている間柄の。

声を大にして言いたいが、言わない方が良さそうだ。何となく。

その後も延々と何やら語っていたがほとんど耳に入っていなかった。



どうしよう、やっぱりあげた方が喜ぶのだろうか。

でも男が男に贈るのって変じゃないか?

そもそももらって喜ぶかな、甘いもの。



家に帰るまでずっとそんなことを考えていた。



家に着くと椅子に座って何やら読んでいる姉の姿が見えた。

「何やってんの?アリーズ。」

「あら、お帰りなさいジーン。今年のチョコ、どういう風のにしようかなって…。」

ジーンはどんなのが良い?なんていろんなチョコの写真が載っている雑誌を目の前に広げられる。

「そういうの贈る奴に聞くもんか?どんなのでもいいよ、アリーズがくれるんなら。」

というか、ちゃんと食べれるものならば何でも良いよ。

と言いかけたのを飲み込んで笑顔を返す。

「えぇ〜?そう?どうしようかなぁ……。」



やっぱり楽しいものなんだろうか、こういう事を考えるのは。

ぱらぱらとページを繰りながらにこにこと嬉しそうに考えているアリーズを見ながらふと考える。

「ねぇ…アリーズ……?」

「?なぁに?改まって……。」

「オレも…作りたいんだけど…そういうの…。」



ぽとりと雑誌が落ちる。

あぁ!やっぱり変なこと聞いた!!?

俯いた顔を見せないまま、床に落ちた雑誌を拾い上げ手渡す。

「……ハヴェル博士?」

何故ばれる!?



「あの…。」

「そうよねぇ、いつもお世話になってるし、お父さんもジーンも。」

やっぱりやめると言いかけたところを、何処か嬉しそうに勘違いしている間延びした姉の声がかき消す。

「こういうときくらい、日頃のお礼も兼ねて贈り物をするのも良いかもしれないわね。」

「う…うん……。」

どうやら良いように解釈してくれたようだ。変に勘ぐられなくて良かった。



「博士って甘いもの大丈夫なの?」

「さぁ…あんまり見たこと無いな…。あ、でもこの前のフルーツケーキ、おいしいって言ってた。」

あらほんと?良かったわ〜なんて笑いながら、先ほどのハート型やらクマの形やらの写真が載せられたページとは違うところを開く。

「あまり甘くないようにしましょうね。お父さんもこれにしようかな。」



そういって指さしたのは至ってシンプルなボール型のチョコレート。

トリュフと書かれているが、特に気にして食べているわけでもないジーンには特に目立った違いが分からない。

あまり甘くないのなら、これでいいか。



「うん。これでいいんじゃない?」

「じゃあ明日材料買ってくるから、姉さんと一緒に練習しましょう。」

「うん、わかった。」

じゃあ当分寄り道は出来ないな。

ハヴェルには…どう言っておこうか。

へたに行けないなんて言うと怪しんできそうだし…。

かといって正直に言うのもな…驚かせたいんだよな、ほんとは。



部屋に入り、鞄と制服を放り投げベッドの上に転がる。

アリーズから借りてきた先ほどの本をぱらぱらとめくってみる。

どこもかしこもチョコレートの写真。

見てるだけで胸焼けがしてきそうだ。

女子が持ち寄って騒いでいたのもこんな雑誌類だったのだろうか。



贈る相手がいると、どことなくうきうきする。

贈ること以上に、相手のことを考えて、何を贈るかを試行錯誤しているときが一番楽しい。

一緒に作ることになったトリュフのページを開いて、笑みが零れた。

「喜んでくれると良いけどなぁ…。」





「と、いうわけで、当分寄れないから。」

『は?』

「ごめんなさい!課題溜めてたんです!!今週中に済ませないと単位やらないって言われたの!!」

『……あれほど提出物は出せと……。』

「うぅ…そんなわけで、今週いっぱいそっち行けないから…。」

『私の家でやればいいだろう?教えるぞ?』

「!と…取ってないノートとか…プリントとか…友達の見せてもらいながら一緒にやるから…。」

『………。』



ケータイ越しに、盛大な溜息の音。



「ハヴェル…?」

『…分かった。次から溜めたりしていたら容赦しないからな。』

「う…。」

『宿題は此方でやれ。』

「は…はぃ…。」

がんばれ、と一言残して、静かに通信が切れた。

「……ぶはぁ〜!!何とか…誤魔化せた…かな?」



本当は課題なんて溜めてない。

家に帰ればアリーズが五月蠅いし、ハヴェルのとこに行けば行ったで無いのかと聞かれるし。

もちろんあるなんて言えばすぐさま勉強会に移行。

ほんとはもっと別のことをしに行っていたのに…と涙をのんで宿題をしたこともあった。

連休なんて、特に。



おかげで未提出の課題なんて一つもないんだ、本当は。

でもこうとしか良い言い訳が思いつかなかった。

ばらしてしまった方がよかったのかなぁ…。

今更嘘です、なんて言えば手痛いお仕置きを受けることは必至。

……やめておこう。





「……。」

周りを飛び回るケータイを見つめながら、軽く首を傾げる。

「課題…目に付いたものは一通りやらせていたはずだが…。見落としでもあったかな…。」

単位がもらえないのは一大事だが、それ以上に一大事な気がするな、とかふと思ったりして苦笑する。

「週末まであと二日じゃないか。土日は休みだし…。」

どうしても終わらなければ泣きついてくるだろうと考えて、中断していたデータ処理を再開し始めた。



「見てみて、ジーン。」

「……何それ。ゲロ袋?」

「……。ラッピング用よ!もぅ…。青と緑、どっちが良い?」

「………緑。」

「じゃあお父さんは青ね。リボンはねぇ…。」



……女って、忙しい生き物だなぁ……。

細かく刻んだチョコレートを湯煎にかけながら溜息をつく。

「あっ!生クリーム忘れちゃった!!」

「……姉さん……。」

「すぐ買ってくるから!そのまましっかり溶かしててね!」

「はっ!走るなってば!!」



ばたばたと慌ただしく駆け出す姉をはらはらしながら見送る。

転けてなけりゃいいけど……。

アリーズが帰ってきたのはそれから数分後。

ひたすらかき混ぜ続けて少し手首が痛い。

「ん、しっかり溶けたわね。それじゃ材料入れま〜す。」

細かく砕いたクルミとラムレーズンを刻んだものと先ほど買ってきた生クリームを入れて混ぜて混ぜて。



とろとろのままだと丸めにくいので少し冷ましてから手のひらの上でころころ転がして形を作る。

クッキングシートを敷いた天板の上に並べて、粉砂糖をまぶすものとココアをまぶすものとに分けて振りかける。

「はい、できあがり。」

「えぇ?もぅ!?」

「簡単でしょ?」



簡単すぎだ…本当においしいのかなぁ…。

「たくさん出来たし、食べてみましょうか。」

細い指がココアを纏ったトリュフに伸びる。

それじゃあ、と粉砂糖のほうに手を伸ばして口に放り込む。

「……美味いね。」

「そうね、ビターチョコを使ったからあまり甘くないし、ラムレーズンが大人っぽくて良いわね。」



二人して顔を見合わせて笑う。

もう少し冷ましてから箱に詰めようということで、少し遅めの夕食を取り、それからいそいそと箱に詰めた。

袋は緑なので、箱は反対にしようと青い箱をもらう。

トリュフ用の箱だったのか、中に仕切りがあって、六つ入るようになっていた。

甘いものが好みでない人には妥当な数だと思う。

ラッピングを終えると、小さなカードを取り出して何やら描き始めているアリーズを不思議そうに見つめているともう一枚のカードを差し出される。



「ジーンも書く?小さなお手紙。」

「…いや、オレはいいや。」

手紙って何かくすぐったい感じがするし。

「それより余っちゃったね、どうする?」

「…食べちゃう?」

「あ、アリーズからもらいたがってる奴がいるんだ、あげていい?」

「私から?いいけど。」



物好きな人もいるものねぇ、などところころと笑うアリーズを見て、鏡見ろ、とか小さく心の中で呟いたのはナイショ。

自慢じゃないけどアリーズはかわいいと思う、かわいいというか、綺麗というか。

…シスコンではないと思う、多分。



意外と簡単に出来てしまったチョコレートを冷蔵庫に仕舞い、さてどうしよう。

決戦の日は明後日なんだけど…。

他にも何かつけてみようか、何が良いかな。

そういえばハヴェルの好きなものってあんまり知らない。

好きそうな本は手当たり次第すでに持っていそうだし…。

明日、ちょっと寄り道して、探してみよう。



決戦前日、一層にぎやかになった女子が先生にチョコレートの雑誌を没収されていた。

ご愁傷様。節度は守らないとね。

HRが終わるやいなや教室を飛び出すとそのまま市街地へ。

うろうろといろんなものを手にとっては次、次と合いそうなものを探す。

服…とかどんなの着るのか分からないし、着てもらえないと寂しいし…。

季節ものはちょっとなぁ…。どうせならいつも使ってもらいたいよなぁ…。



贈り物を選ぶのって大変だなぁ。

デパートも大勝負なのか、贈り物になりそうなものをこれでもかと言わんばかりに集めて陳列している。

それに群がる人、人、人。

「……酔いそう…。」

ひとまずここから離れよう、と静かな一角に避難。



小さな雑貨屋を見つけてちらりと覗く。

ちょっとしたアクセサリーやらを取り扱う店のようだ。

あまり派手じゃない落ち着いた雰囲気の店内に、控えめに置かれている商品類。

麻ひもや皮で出来たペンダントやら、綺麗な石の付いたピアスやら。

きらびやかさはちっとも無くて、さり気なくそこにちょこんとありそうなものを使った装飾品。

「……いいかも。」

銀で作られた、細かな細工の入ったリングを手に取って、これはちょっと恥ずかしいだろ、とか一人で突っ込んでみたりしながら物色。



物色し始めて数分、無駄に長い、鎖のようなものを見つける。

ペンダントにしては飾りの石が変なとこに付いている。

鎖の先には小さな輪が作られている。

「何だろ、コレ。」

店員に聞いてみれば眼鏡バンド、なるものらしい。

本来はスポーツ用品らしいのだが、こちらはその効果はほぼ皆無。

首から提げてアクセサリー感覚で使うもの、らしい。



眼鏡なんてかけてたっけ…。

……………………………。

あぁ!一度だけ、本読んでるときにかけてた気がする。

無駄にかっこよかったよなぁ、とか思い出してにやけかけて首を左右に振る。

店員に怪しまれたのは言うまでもない。

慌ただしく会計を済ませ、綺麗に包装してもらって店を出る。



日もほとんど隠れてしまって空と地面の境から薄闇が伸び始めていた。

「う〜わ…もうこんな時間かぁ…。」

早く帰らないとアリーズが心配するなぁ。

先ほど買った小さな小箱を鞄の中に大事に仕舞い込むとスキップをしそうな気分で足早に帰宅した。

案の定、アリーズに叱られたのだが、ほとんど耳に入っていなかった。



早く明日になれ。





次の日、学校が終わってすぐさま家に帰る。

「アリーズ!オレ今日お泊まり!!」

「失礼の無いようにね?チョコ、せっかく作ったんだから、忘れないようにね?」

週末はいつものことなのでアリーズも特に気にしない。

そのまま直行しても良かったんだけど、チョコを持って学校に行くのも何だか恥ずかしかったし、溶けると困るので家に置いたままなのだった。

もちろん、友人には渡した。

アリーズから、義理だぞ、と念を押して。

大喜びしたのは言うまでもない。自分も手伝っていることはあえて黙っておいた。

変な誤解を生まないように、だ。



適当に着替えやらを鞄に詰めて飛び出す。

少し会っていなかっただけだけど、やっぱりそれでも寂しいものだ。

ハヴェルもそう思ってくれてると嬉しいなぁとか思いながら、気がつけば入り口の前。

「ハヴェルー?いる?」

薄暗い部屋の向こう、薄ぼんやりと灯る明かりのそばからカタカタとキーを叩く音。

返事がないが、聞こえていないのだろうか。



音も立てずに忍び寄りとんとん、と肩を叩くと驚いて振り向かれた顔にいつぞやの眼鏡。

だから!無駄にかっこいいから困るんだってば。

「きっ…来ていたのか。すまない、気がつかなかった。」

「こんな暗いとこで睨めっこしてるから目が悪くなるんだろ?」

この調子だと、時計も見ずに仕事をしていたんだろう、部屋の明かりを付けながら鞄を床に降ろす。



「……もうこんな時間か……。」

やっぱり。

「夕食はまだだろう?すぐに…。」

「そのまえに、ちょっと。」

いつもの特等席に座り、向かい側に座れとテーブルをとんとんと叩く。

首を傾げながら指示されたように向かい側に座る。

改めて正面から見ると、眼鏡似合うなぁ……。



「今日、何の日か知ってる?」



「?さぁ……。」

…やっぱりね。

「何かいろいろ、届いてない?」

「……怪しい小包ならそこに。」

部屋の隅に、両手を使っても足りないほどの小包が置かれている。

「毎年届くんだ。新手の嫌がらせかと手を付けていないんだが…あれが何か分かるのか?」

「………。」



思った通りだ…。

うつぶせになって笑いを堪える。

あーもー…悪いけどかわいい。大人なんだけど、かわいい。

「ジーン?」

困った顔をしているのが容易に想像できる。

「じゃあ、オレも新手の嫌がらせに参戦しようかな。」

鞄の中からごそごそと、小箱と緑の小さな袋を取り出してテーブルの上に乗せる。

「じ…ジーン?」



「今日さぁ…バレンタインなんだよね。」

「!?」



「受け取り拒否、する?」

「!!?」

テーブルの上に乗せられたまま所在なさ気だったプレゼントにすごい勢いで両手が被さる。

「………。」

どうやら言葉にならないらしい。



「では…あれも……そうなのか…?」

「多分ね。」

「……何故…。」

何故って言うか!その見てくれで、その性格と実力で何故と言うか!!?

「ハヴェルかっこいいからさぁ…オレ心配だったんだけど…。」

その心配、無さそうだねー…。

理由が分からないのなら、心配も無用だ。いいよそのままで、分からないままでいて良いよ。



「…もらってくれる…?」

くすくす笑いながら顔を上げると心なしか赤くなった顔と目が合う。

「も…もちろんだ!」

神妙な顔つきで赤いチェック柄のリボンをほどき小箱を取り出す。

中から出てきたのは先日アリーズと作ったトリュフ。

「……。」

「やっぱ甘いもの苦手?」

「いや?嫌いではないぞ。ただ…。」

「?」



「どうせなら食べさせて欲しいものだな、と。」

「……。」



馬鹿だーーーーーー!!!

あぁぁ…もう、こんなの世の乙女どもが見たら卒倒しちゃうよ!!

免疫が付いたはずの自分でさえ恥ずかしくてたまらない。

期待でいっぱいの眼差しで見つめられては、しないわけにもいかないだろう。

一粒手に取り口に近づけるが口を開けようとしない。

「ハヴェルー?」

「……。」

摘んだものをひょいと取り上げるとそのまま半開きだったオレの口に押し込む。

「ん!?」




付けたままだった眼鏡を外し、そのまま身を乗り出して顔が近づいてきたと思ったら。

「!!?」

唇を重ねて、半分はみ出ていたチョコをそのまま奥に押し込むと、舌を絡めて溶かし始めた。

舌の上にレーズンとクルミを残して唇を離すと舌なめずりの後にごちそうさまと呟く。

……やられた…っ!!

残ったクルミをカリカリとかみ砕きながら真っ赤になった顔で睨み付ける。



「あと五つ残っているが…。」

「自分で食えっ!!」

腹いせに、もう一つの箱を投げつける。

容易に受け止められて悔しさ万倍だ。

「これは何だ?」

「……。」



しゅる、とリボンをほどく音、包み紙を剥がす、カサカサと嫌にゆっくりとした音。

(多分綺麗にはがしてるんだ…やっぱり性格かなぁ)

「?…鎖……?」

「眼鏡に付けるんだって…、かけてないとき、首からぶら下げておくんだってさ。」

「……あまりかけていなかったのに…良く覚えていたな。」

ここにいる間ハヴェルしか見てないんだから覚えてるに決まってるだろ。

それがかっこよかったりするんなら尚更だ。



「あんまりかけないんなら、必要なかった?」

「いや?そんなことはないぞ。最近ものが見えづらくてな…。よくかけるんだ。」

「明かり付けないからだろ。」

「はは…気がつくと暗くなっている。」



いそいそと先ほど置いた眼鏡に鎖を付ける。

輪の近くに調節用に少し伸びた鎖、その先に赤色の小さな石がゆらゆら揺れている。

目と同じ色。

「ありがとう、大事に使わせてもらうよ。」

「………。」

「しかし困ったな…そうだったのか…気がつかなかった…。」

途端に俯いてしまったハヴェルを不思議そうに見つめる。

「そうと分かっていれば用意していたのだが……。」



自分が用意できてないことが納得いかないのか。

「オレ、別にいらないよ?」

「そういうわけには…。」

「いっつももらってるから、いい。」

難しい顔をして、眉間に皺が寄ったままのハヴェルを手招く。

「?」



身を乗り出して先ほどの仕返しに軽く音を立てて口付ける。

「お腹すいた、ご飯にしよ?」

「………。」

少し驚いた顔をして、すぐに納得したのかはにかんだような笑みを浮かべる。







「…では、あとでゆっくりとお返しさせてもらうとしようか。」







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ミカオ トモさんより、コード・エイジのハヴェル×ジーンのバレンタイン甘々小説でございます☆
フリーなのをいいことにかっさらったわ。
はあ、チョコ爆弾の爆心地は私の頭の上だそうで。
見事ヤラレテシマイマシタヨ。ぐっはぁ トモさんだいすきだ…
絵も本当は本文中にはなかったのですが、描いてくれたので貼っちゃいました。

一緒にさらったイラスト↓




おまけ(笑)↓


ハヴェルかわええええええvvvvvvv