夕餉




殺してお願い殺して
と彼女が立てた爪が僕の肉を抉るのです
爪にはいった赤い組織が指を滑らせるのです
でも彼女のために彼女を殺すことが僕には癪で堪らないのです

僕は彼女の赤く染まった細いきれいな指に触れ

爪を剥がしてあげました。



Q.なぜ子供は無邪気なのですか?
A.まだ産まれていないからです
Q.なぜ大人は絶望するのですか?
A.産まれる前に死んだからです

生暖かい子宮でうずくまりこのナカにいれば怖いことはないと
母体が朽ちるのも構わず漂っているうちに羊水は腐り臍の緒は首に絡み
悪臭と悲鳴をあげる胎盤の上でまだらの視界に死んでいく




お願い消してお願い
と嗚咽する少年の腕は
塩辛い液体と青白い絵の具にまみれ爛れていました
細い首筋には内側から滲み出した首輪がありました

でも彼のために彼を消すことになど僕は興味がわかないのです

僕は手触りのよいきれいな銀の髪の毛に手をさしいれ

毛髪を引き千切るのです。




今日のディナーは銀のパスタに白いソース、
赤いスパイスをふりかけ散りばめたものでした

デザートには甘辛い、よっつのガラス玉を添えて。










2009/4/17